EVENT REPORT

給食未利用食材を子ども食堂でシェフが料理
スペシャルイベントの模様をお届け!

《2020.03.23 @池上コミュニティセンター(横須賀)》

小中学校の一斉休校に伴い休止した給食。その未利用食材を有効活用するスペシャルイベントを、3月23日に開催しました! 有名フレンチシェフが給食食材で特製ランチを作り、子ども食堂の子どもたちに振る舞うそのイベントの様子をレポートします。

  • ライター:河島まりあ
  • フォトグラファー:八木澤芳彦

一流フレンチシェフの料理を子ども食堂の子どもたちにお届け!

今回料理を作ってくれるのは、東京・新橋の「レストラン ラ・フィネス」のオーナーシェフ・杉本敬三さん。小学生の時に料理人を志した杉本シェフは、小学生のころからさまざまな飲食店で修業を始め、12年間のフランス修業を経て独立。フランス料理のシェフでありながら、地元・京都県福知山市で給食の特別メニューを考案するなど、食育への造詣も深い方です。

そして、協力していただいた子ども食堂は、神奈川県横須賀市にある「よこすかなかながや」。普段は平日毎朝の朝食と、週3日の夕食、放課後の居場所を提供。一斉休校の期間中の現在は、新型コロナウイルス予防のため、お昼ご飯のお弁当を提供しています。約70個ものお弁当を作り、配布をするため地域のコミュニティセンターで行われました。

子どもたちの「おいしい!」を想像し、一丸になって作る特製ランチ

用意された学校給食の未利用食材は、秋鮭とサワラの切り身、カレールー。こちらを使い「秋鮭とサワラのクリームコロッケ、タマゴサンドバーガー カレー風味のとんかつソース」を作ります。調理は杉本シェフを中心に8人のボランティアスタッフで行われました。

フランスパン生地のバンズやクリームコロッケの種は、あらかじめ杉本シェフが用意。当日は、手分けをしクリームコロッケの種に衣を付け、油で揚げる作業から始まりました。サクサクに仕上げるため「高温でサッと揚げましょう」と杉本シェフ。よりおいしい状態で食べてほしいと、こだわりが光ります。揚げたクリームコロッケ、マヨネーズ、福神漬けと合わせたゆで卵、カレーソースを杉本シェフ手作りのバンズでサンドし完成です。

給食関連事業者の方々へ。子どもたちからのエールをフラッグに込めて

子どもたちの他に近隣の学童や一人親家庭支援の方々へ、杉本シェフがメニューの説明など直接コミュニケーションを取りながら、完成したお弁当を手渡しました。

また、本イベントでは子どもたちから給食関連事業者への応援メッセージを募集。学校給食の取り止めで影響を受けている方々がいることを話すと、子どもたちは真剣な顔で白いフラッグに向き合います。「早くきゅうしょくが食べたいです」「給食大好き!」「がんばれ!!おいしい食べ物作るのがんばってください!」「きゅうしょくおいしいから、ぜんぶ食べてるよ!早く食べたいなぁ」など、思い思いのメッセージやイラストを書き、給食に関わる方々や生産者へエールを送りました。

おいしくて栄養がある、食の楽しさを伝える杉本シェフのメニュー作り

子どもたちみんながおいしく食べられるようこだわったと杉本シェフ。「魚が嫌いな子どもでも食べやすいように、2種のチーズを入れたベシャメルソースでコクのあるクリームコロッケにしました。たんぱく質がたくさん摂れるように鮭とサワラのほぐし身はゴロゴロ入れています。また、かむことは脳にとても大切なので、バンズはフランスパンの生地を使いました」。ポイントになるソースは、とんかつソースをベースにフォンドボーやカレールーを入れ、子どもにも親しみがある味付けに。タルタルソース代わりにサンドしたゆで玉子に福神漬けを混ぜているため、一体感も生まれています。

「親が忙しくお惣菜に頼りがちな家庭もあると思います。そんな子どもたちに、より自然なものや手作りのもの、添加物を使っていないものを食べてもらいたい。そんな気持ちで参加しました」と杉本シェフは語ってくれました。

プロの味を楽しめる、特別な機会を子どもたちに

「よこすかなかながや」の主催・和田信一さんは、「子ども食堂には、さまざまな事情を持つ子どもたちがやってきます。今回のお話をいただいて、彼らに一流シェフの料理をぜひ食べさせたいと思いました。今は新型コロナウイルスの感染を予防するために叶いませんが、みんなで食卓を囲み、話をしながら食べたかったですね」と話してくれました。「以前から子ども食堂に興味があり、友達に誘われて参加しました。味覚は子どものうちに形成されると言われているので、プロの味を楽しむ機会があることは良いことですね!」と参加したボランティアスタッフ。子ども食堂に携わる方々からも、好評を得ることができました。

給食未利用食材を一斉休校によりお昼ご飯に困っている子どもたちへ提供した本イベント。食事だけでなく、プロの料理を味わったり、給食に関わる方々を想像したりする機会も、子どもたちに与えることができました。新型コロナウイルス感染予防のため、その場で子どもたちに食べてもらうことはできませんでしたが、きっと「おいしい」と笑顔になってくれたことでしょう。

杉本シェフ

PROFILE

Restaurant La FinSレストラン ラ フィネス

杉本 敬三すぎもと けいぞう

1979年、京都府福知山市生まれ。料理が好きで、小学校3年生、8歳で料理人になることを決意し包丁と砥石を買ってもらう。19歳で渡仏。ロワールやシュノンソーやリモージュといった地方都市をあえて選び働きながら滞在し、ホテルレストラン【ボンラブルール】などのシェフを務める。フランスでの12年間に及ぶ修業を終えて帰国し、2012年、東京・新橋に「AUTODIDACTE」(独学者)をコンセプトに【レストラン ラ・フィネス】を開店する。2013年日本最大級の料理人コンペティション”RED”のU-35初代チャンピオンとなる。

Restaurant La FinSレストラン ラ フィネス

東京都港区新橋4-9-1 新橋プラザビルB1

https://www.la-fins.com/

https://r.gnavi.co.jp/duv849g60000/

ながやシェフ

PROFILE

よこすかなかながや

「出逢った子どもたちの今の心と未来につながるいのちを大切に想う」を理念に平日毎朝の子ども食堂と、毎週火曜日・木曜日・土曜日の14:00〜夕飯まで、地域の小・中学生を対象にした居場所と食事の提供を行う。

*放課後の居場所は登録不要。
*食事は登録制になっており、より必要と思われる家族の子どもたちを優先。

https://yokosukanakanagaya.localinfo.jp/