EVENT REPORT

「親子で『フードロス』について探求しよう!
給食未利用食材クッキング」を開催しました

《2020.10.31 @探究学舎》

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため一斉休校となった小中学校。それにより発生した給食の未使用食材を使うオンライン料理教室を、学習塾「探究学舎」が開講しました。子どもたちが料理を通し、フードロスについて学ぶ様子をレポートします。

  • ライター:河島まりあ
  • フォトグラファー:八木澤芳彦

いつも食べている給食を深く知る!子ども向け料理教室

10月31日(土)に「親子で『フードロス』について探求しよう!給食未利用食材クッキング」を開催。小学生を対象に、学校給食として使われずに余った魚を、子どもたちと一緒に考え、シェフの技を取り入れながらおいしく食べる方法を探るイベントです。参加者は講師の森田太郎さんとオンラインでつながり、事前に送られてきている魚を使って、自宅で料理。家庭で調理しおいしく食べることで、親子でフードロス問題について対話するきっかけになりました。

好奇心に火をつける学習塾「探究学舎」が授業を担当

今回、うまいもんドットコム(株式会社食文化)とコラボし、子どもたちに向けて特別授業を行ったのは、小学生向けの学習塾「探究学舎」。成績アップや、受験合格を目指す一般的な学習塾と違い、“驚きと感動”を与える授業を行っており、教科ごとではなく、宇宙や元素、医療、歴史などが授業のテーマ。クイズやゲームを取り入れ「もっと知りたい!」「やってみたい!」という興味の種をまき、子どもたちの探究心を伸ばしています。東京・三鷹の教室でのリアルな授業だけでなく、ライブ配信によるオンライン授業も開始し、全国の子どもたちの好奇心を刺激中。今回の特別授業もオンラインで行い、約100名の子どもたちとその家族が参加しました。

給食クイズや調理実習を通して、食への関心がアップ

授業は、給食についてのクイズからスタート。日本の昔の給食や世界の給食、またフードロスについて森田さんが出題。子どもたちは自分たちが普段食べている給食を思い浮かべながら、真剣に回答しました。

給食への関心が高まったところで、メインの調理パートに進みます。「探究学舎」の代表で講師の宝槻泰伸さんが、給食未利用食材の愛知県産の養殖ブリに軽く塩を振り、油引いたフライパンで焼く、シンプルな方法をレクチャー。その後、子どもたちも実践し、味見をしました。子どもたちからは「おいしい」と声が上がる一方で、「もっとおいしくできるかも」という意見も。そこで、ミシュラン一つ星のレストレン「ル・スプートニク」のオーナーシェフで、フレンチの鬼才と呼ばれる髙橋雄二郎シェフに聞いた“おいしい魚のソテーを作る方法”を、森田さんが紹介します。

髙橋シェフによると、調理の1時間ほど前に冷蔵庫から出し常温にしておく「①適温」、余分な水分や臭み除くために30分前に塩を振っておく「②塩」、その水分をキッチンペーパーで取り除く「③一手間」、皮や表面は強火でさっと焼き、網と蓋、もしくはアルミホイルを使った余熱で火を通す「④火」の4つのポイントが重要だそう。子どもたちも髙橋シェフの技を使い、再度ブリを調理しました。実食すると「さっきよりもおいしい」と、1度目と比較した上で、おいしくなったことが実感できたよう。

その後は、魚に小麦粉をまとわせバターで焼くムニエル、油を使い低温調理するコンフィの作り方を紹介。プロの本格的な技の数々に子どもたちも興味津々で、「やってみたい」という子も多くいました。最後に髙橋シェフからは「おいしいものを食べてもらおうという気持ちが一番大事。両親や兄弟、彼女に作ってあげる。作ってあげようという気持ちを持って料理してください」とメッセージが寄せられました。

自分で考え、実践したから“楽しかった”を引き出す体験に

1度目の調理でも、自分で調理した楽しさから「おいしい!」の声が多く集まり、中には「完璧」との声も。しかし、森田さんが「もっとおいしくできると思う?」と問いかけると、「もっとおいしくできるかも」と考え始めた子どもたち。「塩を増やしたら?」「もうちょっと焼いてみる」「火加減を調整して、もっと柔らかくできないかな」など、たくさんのアイデアが上がりました。その後、シェフの技を使って2度目のブリの塩焼きを作り、味見すると「うますぎる!」「さっきよりもおいしくできた!」と歓声が。調理を手伝っていた保護者からも「すごい!おいしい」「今度からこの作り方にしよう」との声がありました。細かいポイントを抑えることで、格段においしく料理できることを学んだ子どもたちは、「楽しかったし、もっと料理をしてみたい!」「これが本当に給食のブリなのかって思った」「パサパサしていなくておいしかった。料理も楽しかった」と大満足。また、フードロスについても学び、食べ物の大切も再認識したようです。

子どもたちの歓声で食、フードロスへの興味を実感

「シェフ技を使って『味が全然違う!』『おいしい!』という驚きの声が一斉に聞こえ、嬉しかったです。調理である“実践”と作り方でよりおいしくなったという“体験”によって、子どもたちに驚きと学びの機会を与えられました」とは、森田さん。探究学舎では、9、10月に“食編”というテーマでオンライン授業を行い、食や料理の歴史、人はなぜ食べるのかなどについて探究してきました。そこでは、フードロスにも焦点を当てており、今回のうまいもんドットコムとのコラボレーションは、給食未利用食材という題材を扱うことで、子どもたちにより身近な問題だという気づきを与えられたと感じているそう。

「今回の授業はこのグローバルな課題に対し、調理という実践によって、より身近に感じられるきっかけになったでしょう。私たちが生活を通して、多くの食材を捨ててしまっている現実を目の当たりにしている子どもたちに、ただ『食材を無駄にしない』ということではなく、『ひと工夫でおいしくなり、食べるのが楽しくなる』という、学びを深めることができたと感じています」(森田さん)。

本来食べるはずだった子どもたちの手により料理され、おいしく食べられるだけでなく、学びを与えるきっかけにもなった給食未利用食材。これからの世界を担う子どもたちが、フードロス問題に立ち向かう第一歩を踏み出すイベントになりました。

森田 太郎

PROFILE

探究学舎

森田 太郎もりた たろう

1977年生まれ。東京都出身。静岡県立大学で国際政治とロシア語を学び、99年よりボスニア・ヘルツェゴビナにたびたび渡航し、サッカーによる民族融和を目指した論文で『秋野豊賞』を受賞。『サラエヴォ・フットボール・プロジェクト』代表となり、現地に民族融和を目的とした少年サッカークラブ『クリロ(翼)』を立ち上げる。その取り組みは、朝日新聞の連載「人」など多くのメディアで報じられた。東京都小学校教諭として13年勤務(退職時は主幹教諭)した後、2019年4月より探究学舎講師に。著書に『サッカーが越えた民族の壁――サラエヴォに灯る希望の光』(明石書店)。

探究学舎

https://tanqgakusha.jp/

六郷さん

PROFILE

ル スプートニク

髙橋 雄二郎たかはし ゆうじろう

1977年福岡県生まれ。大学時代料理をしたことをきっかけに興味を持ち、卒業後調理師専門学校へ進む。なかでも華やかなフランス料理に惹かれ、のめり込む。卒業後、都内レストランで修業し2004年に渡仏。フランスミシュラン三ツ星『ルドワイヤ』をはじめ、ビストロ、パティスリー、ブーランジェリー等、各分野を専門的に経験し2007年に帰国。シェフを務めた『ル・ジュー・ドゥ・ラシエット』で5年連続ミシュランガイド東京一ツ星を獲得。独立し、2015年『ル・スプートニク』をオープン。早くも2016ミシュランガイド東京一ツ星を獲得した。料理という創造的な「旅」の時間をお客様と過ごす巡り合わせに感謝し、心をこめた料理とサービスを提供している。

ル スプートニク

https://le-sputnik.jp/