米どころ越後長岡では、約40万俵の米が生産されます。 コシヒカリの発祥の地 長岡でもJAS有機認証のコシヒカリは非常に少なく、 その生産量はわずかに200俵 総生産量の約0.07% まさに幻の米です。 平成10年より、金沢巧さん他10戸の農家が、無農薬・無化学肥料栽培のコシヒカリ作りに挑戦してきました。 私が長岡の有機栽培の田んぼを訪ねたのは、9月下旬。広大な黄金色の稲穂の 広がり まさに収穫の秋です。 |
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ちょうど、稲刈りの最中だったこともあり、コンバインから逃げる虫やカエルが『蜘蛛の子を散らす』状態でした。 言い換えれば、そうした雑草や虫たちの存在が、農薬や除草剤を使っていない証拠でもあります。 |
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有機栽培と一口で言っても、それはひたすら、雑草と病気と害虫との闘いです。除草剤をまかないこと、それは雑草への宣戦布告通常の稲作では、田植え後、1週間以内に除草剤を水田に散布します。そうすることで、雑草の発生を驚くほど抑制できます。ところが、有機栽培の場合、除草剤はもちろん使いませんので、特殊な田植え機を使用し、水田一面を紙で覆いながら、その上から苗を植えて行きます。 紙が日光を遮断し、雑草の発芽と繁茂を抑制します。 それでも雑草は生えてきます。特にあぜは雑草との果てしない闘いになります。 ある程度は機械で刈り取りますが、狭い場所や稲の中に生えてくる雑草は、農家の皆さんが手で刈り取ったり、抜いたりします。 特に夏場は抜いた端から生えてくる状態になり、最後は根負け状態になるそうです。
さらに、病気と害虫との闘いが待っています。風通しを良くし、草取りを徹底し、病気や害虫の発生を少なくします。風通しをよくすること。すなわち、収穫量を犠牲にします。 通常の稲作では、種籾消毒から始まり、病害中防除まで数種類(十数成分)の農薬 を使用しますが、有機栽培では使用できません。 病害の抑制は、風通しの良い圃場にすることが一番です。それを粗植と言います。 つまり、籾(もみ)を多く成らせない=米が多く取れない ことを選びます。 害虫対策は、ひたすら、田の周辺の雑草を、常に綺麗に刈り取ることにつきます。 さらに、有機の水田は、あぜ際から4メートルを緩衝地として刈残し、有機米扱いでは なく、一般米として処理します。 結果的に、有機米の収穫量は一般的な米と比較すると、2割程度少なくなります。 つまり、安全安心の美味しいお米を作るには、農家の汗と、努力と、収穫量の犠牲が必要となります。 私も稲刈りを手伝いました。初めてのコンバインの運転でしたが、直線部分は意外に簡単。最新のコンバインは刈り取りながら、脱穀し、藁は切り刻んでしまいます。 こうして収穫された米は農家ごとに管理され、巨大な冷蔵倉庫に保管されます。また、収穫された米の品質(形状だけでなく、味まで)は厳しくチェックされ、記録されていきます。
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『こんなに苦労して有機栽培で米を作っても、安くしろ安くしろと言われるもんだから、そのうち、有機栽培の担い手はいなくなるよ。』 バブル崩壊後、デフレ経済の中、『安く!安く!』と金科玉条のように唱えてきた、流通と消費者。もう、それでは生産現場が成り立たなくなってきています。 収入にならなければ、後継者もいません。昨今では外国から食材を輸入するのも、難しくなってきています。一度、途絶えてしまえば、再興が難しいのが農業です。 我々 消費者は、自分たちの食の本質を考える岐路に立たされていると思います。 |