新規就農から苦難を乗り越え作り続けた。
和歌山県
木島さんご夫妻の
「まりひめ」
木島さんご夫妻との出会いは、2016年の1月頃。農業女子プロジェクトに賛同していた奥様をご紹介されたことがきっかけでした。
神奈川県生まれの賢一さん、愛知県生まれの貴子さんは、お子様が誕生したのを機に、奥様のご両親の生まれ故郷である和歌山県日高川町でいちご栽培を始めるために移住しました。
新規就農で、約1年間のいちご農家への研修を経て、2013年にいちご農家として開業しました。
2010年に和歌山県が開発して話題になっていた「まりひめ」に出会い、就農当初から現在まで栽培の中心に据えてきました。まりひめは、味は・肉質とも素晴らしいのいちご。しかし、栽培が難しく収量が安定しない生産者泣かせの品種です。
賢一さんは「毎年、苦労が絶えなかったけれど、和歌山県のオリジナル品種としてこれほど素晴らしいいちごは、なかなかないです。」と言います。
2025年2月18日 撮影
柔らかくて多汁な「まりひめ」。
外見の美しさはまるで模型のようです。
ハウスを見せていただいた2025年2月18日は、和歌山県では夕方から雪が降る予報で最も寒い時期でした。
2番果がピークを迎える直前で、間もなくピークを迎える「まりひめ」が、たわわに実っていました。冬のいちごは、厳しい寒さの中でゆっくり育ちます。果皮も硬く引き締まり、長く時間をかけて栄養を蓄えるので、とても味が良いのが特徴です。
「根元まで真っ赤ですね。甘くて果汁もたっぷり。順調そうでよかったです。」
と賢一さんに声をかけると、ここ数年が大変に苦しい状態にあったため、とても嬉しそうでした。
味を乗せるために手間暇は
惜しみません。
「まりひめ」の本当の実力を
知ってほしい。
「まりひめ」は、柔らかくて果汁が多い品種で、2010年当時の期待感はとても高かったです。
しかし、和歌山県の産地全体としてのブランド化が弱く、登場から数年で徐々に注目度がさがってしまいました。理由はいくつかありますが、生産者が各々に独自の作り方をしたため、品質の差が大きくなり、質の悪い「まりひめ」が流通したことも大きかったと思います。
加えて、他のいちごよりも3割も収量が少なく、異常気象にも弱いため、まりひめの生産者は昔よりも減りました。より作り手を選ぶいちごになったと感じます。
そんな中でも、私が作り続ける理由は、なんと言っても「きちんと作ると美味しいから」の一点です。
現在、まりひめを作っている人は、味に惚れ込んでいる人か、腕が良く実力を引き出せる人だと思います。私も、和歌山県の生産者として、もう一度、県を代表するいちごとして、本来の地位に返り咲くことを期待しています。
それだけの実力がある品種だと自信があるので、たくさんの人に私が作った「まりひめ」を、召し上がってほしいです。
水分、栄養状態を管理するから
美味しい苺が育ちます。
ハウス2棟で約15,000の苗を管理します。木島さんはいちごを美味しくするため肥料と水のバランスに細心の注意を払っています。栄養を与えすぎても美味しい実はつかず、逆に絞りすぎると苗が弱ってしまうのです。いちごの状態を毎日確認して対処する能力が、生産者の腕の見せ所。
気温が高すぎればハウスを開けて温度調節もしなければなりません。毎日の細やかな管理が美味しい実を育むのです。
施設栽培の農業は、高額な初期投資がかかります。近年、資材費が高騰したこともあり、40年前に500万円で作ることができたハウス一棟を、今つくるときちんとしたもので3,000万円かかります。仮に半分は国や県から補助金が降りるとしても1,500万円を自己負担しなければなりません。
そんな生産者にとって最も大切なハウスですが、木島さんは2019年の台風で3棟のうち1棟がつぶれてしまいました。これから数十年活躍するはずのハウスが一瞬でダメになったショックは、ご本人以外には決してわからないはずです。
さらに、近年問題になっている異常気象で、高温によりいちごの苗が枯れてしまったり、自分の力ではどうにもならない状況が、毎年のように続いたのです。
39苗を15,000苗まで自分で増やす。
苗はお金を払っても買えないです。
「まりひめ」が大変なところは、まず苗が欲しくても簡単に手に入らないこと。
一般的な品種であれば、苗が15,000苗必要なら、苗屋に頼めば15,000苗をもってきてくれます。しかし、まりひめは県が作った苗を希望者に配布します。その数量が少ないため、自分で増やすしかないそうです。
今年、木島さんに割り当てられた苗は、たったの39苗。これを秋に定植するまでに自分で15,000苗までふやさなければなりません。最盛期のいちごの世話と収穫をしながら、翌シーズンの苗を増やし、枯れないように世話をする。大変などという一言では片づけられないほど、気が遠くなる作業だと思います。
「お金を払って、翌年の苗を買うことができるなら、是非そうしたい」と木島さんは言います。実際に、このように大変な思いをして自分で増やした苗も、昨年度は秋の高温で定植後に多くが枯れてしまいました。そのときは、仲間から少しばかり苗を分けてもらってしのいだそうです。
お金で解決できない問題とはこういうことを言うのだと思います。
2025年現在で和歌山県内で200軒をこえる生産者がいます。その生産者が、同じ苦悩を抱えながら栽培していると思うと、箱につめられた1粒1粒のいちごが特別なものだと感じます。
文:(株)食文化 赤羽 冬彦
複数の配達期間が選べます
2/16〜28出荷◇ 木島さんの 「まりひめ」 和歌山県 日高川町産 大粒 9〜15粒入 贈答用 約450g 産地化粧箱 ※冷蔵
3,500円(税込)
- 販売中 在庫数 10
- 豊洲市場ドットコム



