北海道産の昆布の僅かに百分の一 幻の天然羅臼昆布 豊かな知床の山々と海が育てる羅臼昆布 四十にも及ぶ手間暇を費やし、北の海藻は極上の調味料に生まれ変わる その間、海藻の昆布は僅かに9%の重量に凝縮され、熟成された美味となる
羅臼昆布の学名は利尻系 えながおに昆布
その歴史は意外に浅く、明治末期と言われています。大阪の商人が根室に昆布の買い付けに訪れた際、品質の良いものの産地を辿ったところ、それが知床の産だったようです。
知床半島には深い森が広がり、無数の川がながれ、アムール川からの流氷は膨大なプランクトンを運んできます。さらに、複雑なリアス式海岸が豊かな生態系を生み、そこに育つ羅臼昆布は昆布の中でも最高レベルとの評価を得ています。
そもそも、羅臼昆布は資源量が限られているので、北海道の昆布生産の3%にも満たない量ですが、さらに、天然ものとなると、1%程度と、まさに幻の昆布です。
北海道産の昆布生産量に占める天然羅臼昆布の比率(生産量の単位:t)
年度 | 総生産量 | 内、羅臼昆布 | 内、天然もの | 比率(%) |
---|---|---|---|---|
平成19年 | 17,875 | 659 | 288 | 1.6 |
平成20年 | 19,766 | 241 | 57 | 0.3 |
平成21年 | 19,490 | 666 | 253 | 1.3 |
3年間平均 | 57,131 | 1,566 | 598 | 1.0 |
検査供給実績より抜粋
天然の羅臼昆布と養殖の違い
昆布は浅い水深(2〜10m)の岩礁地帯に生息するので、天然もの漁場は基本的に前浜となります。(※前浜とは、浜の目の前の海)
品質は浜によって異なるので、一概には言えませんが、羅臼昆布の場合、天然ものも養殖ものも、同じ海域で、同じ期間をかけて育ちますが、養殖ものはロープに種を植え付けて育ちやすい状態で生育することに対し、天然ものは海の底に横たわるように葉を広げ、厳しい環境で育ちます。
海が荒れれば、岩とぶつかるでしょうし、昆布が大好物のウニに齧られるかもしれません。そうした厳しい環境が天然の羅臼昆布を骨太に育ててくれるので、その出汁の根性にも、当然差が出ます。
海藻の『利尻系えながおに昆布』が『羅臼昆布』という食材に進化
知床半島の短い夏、およそ40日間、羅臼昆布漁は行われます。40日間と言っても、干す工程を考え、好天が続く見込みが立たなければ漁はできません。天候が悪ければ、良質な昆布は作れないので、まさにお天道様頼みとなります。
昆布竿と水中めがね(箱めがね)を積んだ小舟が前浜に集結し、朝6時の白旗の合図とともに、一斉に漁を開始します。
狙うのは2年目の昆布
昆布は胞子から1年で長く成長しますが、1年目の昆布の出汁の味はのりません。冬に枯れ、春に芽吹き成長した2年目の肉厚の昆布を狙います。
水中メガネで昆布に狙いをつけ、長い竿をねじり、昆布を巻き取り水揚げする重労働は長年の経験と技があって可能になります。
海藻が人の手で素晴らしい調味料と素材に生まれ変わる
水揚げされた昆布は玉砂利の乾場に並べて天日干しされます。玉砂利でなければ砂やゴミが付着したりするからです。少し乾いた段階で根を切り、夕方には番屋に取り込み、その後は天日や機械を使い乾燥させます。
湿り取り、昆布巻き、昆布のし、庵蒸(あんじょう)、日入れ、二回目の庵蒸、根昆布を切り、赤葉刈り、三回目の庵蒸、選別、箱詰め、検査 ようやく羅臼昆布となる
乾燥した昆布を夜の乾場に並べてあえて湿り気を加えます。この工程(湿り取り)で柔らかになった昆布を2枚重ねで巻きながら細かなゴミを取り一晩寝かせます。この工程を昆布巻きと呼び、さらにその昆布を広げ(昆布のし)、重ねてから重石を載せて一晩二晩寝かせます。これを庵蒸(あんじょう)と呼びます。この工程で昆布の色・つや・味が引き出されます。
再び、昆布を干し(日入れ)、再度の庵蒸、根昆布を切り取り、縁の赤い部分(赤葉)や肉薄な部分は思い切ってカットしていきます。さらに庵蒸させて選別し、箱詰めします。選別は漁師が自分でしますが、出荷前に厳格な検査があり、検査済の判を押されなければ出荷できません。
細かく区分けすると40にも分かれると言われる工程を経て、北国の海藻は上質な調味料であり食材になります。この段階で水揚げした段階と比べ僅かに9%の重量に絞りこまれ、熟成し、うまみの塊となります。
羅臼昆布の出汁の魅力
羅臼昆布の最大特徴は味の良さは当然ですが、短時間に出汁がでることです。
ほんの2時間も水につけておくだけで、美味しい昆布出汁が取れます。羅臼昆布は他の昆布と比べ少しだけしっとりしています。
羅臼昆布の最大消費県の富山では、おしゃぶり昆布のように、そのまま羅臼昆布を食べますが、それは羅臼昆布が柔らかで、口の中で出汁がでるのだと思います。
真昆布、利尻昆布、羅臼昆布 どの昆布は上質なものは上質な出汁が取れます。
どれが一番とか二番とは言えません。つまり、好みと用途でどの昆布が合うかがポイントです。もちろん、上手に昆布出汁を取る手間を惜しまないことが最重要です。
出汁を取った後の昆布も美味
そもそも、昆布は出汁を取る為に作られていたわけではないです。古より昆布は珍重されてきましたが、実は、水で戻して昆布を食べることは目的でした。
昆布が出汁の素材として使われるようになったのは、実は江戸時代からと言われています。出汁を取った後の昆布を食べるのは当たり前のことです。
但し、上質な昆布(真昆布・利尻昆布・羅臼昆布)であることが条件です。
真昆布・利尻・羅臼・日高 利き昆布すればわかる違い
昆布の優劣は単純ではないです。先ずは好みが重要です。そして、料理の用途です。どんな使い方をするかで昆布を使い分けるのが理想です。
その点、先ずは4つの利き昆布セットで試してみるのも楽しいです。
贈りものには不老長寿の薬?昆布
その昔、秦の始皇帝が「東の国に不老長寿の薬あり」と徐福に命じて探しに行かせたのは昆布(海藻)だったという説があります。もちろん、真偽のほどはわかりませんが、昆布に含まれる栄養素やミネラルが身体の中で大切な役割を果たすことは分かっています。
『養老昆布(よろこぶ)』、昆布の昔の呼び名『ひろめ(広め)』、『子生婦(こんぶ)』
縁起が良くて子孫繁栄にも繋がる。そんな思いで昆布を贈るのかもしれません。
北海道ぎょれんグループ『ぎょれん鹿島食品センター』はまさに昆布の殿堂
茨城県の鹿島にあるセンターを訪ねました。ここで、今回の天然羅臼昆布他の昆布の加工と出荷をお願いしています。社長の浄土さんに案内をしてもらいましたが、昆布の道は深く長く、そして、まだまだ知らないことがあると痛感しました。
羅臼昆布はデパ地下などで売っていますが、かなり高価だと思います。今回はご自宅用のお徳用パックも企画しました。 この機会に昆布を台所の必需品にできればと思います。上質な出汁と残った昆布を食べる食生活 私はすっかりはまってしまいました。
株式会社 食文化 代表 萩原章史
昆布の栄養価の詳しい情報:http://www.gyoren.or.jp/konbu/index.html
出汁の取り方:http://www.gyoren.or.jp/konbu/howto.html