贅沢な国産生ハム。
“白身”が旨すぎる
オール九州の傑作
純粋黒豚の生ハム
月乃プロシュットKuro
10年の歳月をかけて「渡辺バークシャー・純粋黒豚の生ハム」を作り上げた、盛島英欽さんと田嶋征光さんの思いと、その贅沢な味わいを、うまいもん筆頭目利き人の町田成一がご案内いたします。

美しい洗練の味わい。
まず、この美しさに驚きました。とくに脂身です。澄んでいます。渡辺バークシャー牧場の純粋黒豚は、脂身を“白身”と呼んで大切にしていることは知っていました。そのおいしさも熟知しています。にもかかわらず、人を驚かせる。ひと口食べて、白身の驚異的な甘みに、思わず笑みがこぼれました。
味の特徴は、洗練された綺麗な熟成香と、とろけるような美しい旨み。これに尽きます。素材としての肉と脂の、濁りのないおいしさが素直に伝わってきます。これこそ、素材の良さ、塩、時間、環境、そして作り手の熱き思いが成せる業なのだと思います。

ご飯と食べたい生ハム。
舌の上でとろけるような味わいは、温かいご飯と出会うことで最高潮に達します。これ以上の言葉を必要としないほどの生ハムです。

日本酒や芋焼酎を呼ぶ
生ハム。
酒は、日本酒です。純米吟醸です。上質な芋焼酎のお湯割りも、純粋黒豚の甘みを豊かにしてくれます。ワインなら赤よりも白ワインです。

材料は肉と塩。熟成は18カ月。
肉は鹿児島県産と熊本県産の純粋黒豚のもも肉。塩は五島灘の海水塩。材料は以上です。熟成は佐賀県太良町で18カ月。これがオール九州で作り上げる生ハム「月乃プロシュットKuro」です。

商品名は「月乃プロシュットKuro」。
佐賀県太良町は、有明海に面した“月の引力が見える町”。潮の干満差が6mもあるというところです。「月は、日本文化の象徴でもあるので、太良町の特徴である月を商品名に付けました」と盛島英欽さんは語ります。生ハムを作る「シャルキュティエ田嶋」は、有明海を臨む、あたり一面はみかん畑という丘にあります。

「10年越しの夢が叶い
ました!」と
盛島英欽さん。
盛島さん(画像左)は、渡辺バークシャー・純粋黒豚に惚れ込み、広尾にその専門レストラン「旨焼もぐり」を開店。さらにはその販売卸と商品開発を担う(株)プラチナエイトを設立して、渡辺バークシャー・純粋黒豚の普及・発展に力を尽くしてきています。
「純粋黒豚を使えば日本一の生ハムが作れる」「生ハムなら、渡邊近男さんが念願していた純粋黒豚を世界に、という夢の一翼を担える」と心に決めた盛島さんが、約10年前に出会えたのが「シャルキュティエ田嶋」の田嶋征光さん(画像中央)だったのです。
※鹿児島の黒豚の原点にして頂点と言われる「渡辺バークシャー・純粋黒豚」の創業者である渡邊近男さんについては下記をご覧ください。
鹿児島・渡辺バークシャー牧場を訪ねて

田嶋征光さんです。
田嶋さんは、スペインで出会ったハモンセラーノのおいしさに衝撃を受け、生ハムづくりを志しました。
「まだ、たくさんの人が手掛けていないものを作りたいという思いもありました。当初は、佐賀県という温暖多湿な土地でいい生ハムが作れるのか不安でしたが、“秋田県だって夏は30℃を超えるのだから佐賀県だってできる。夢は持ち続けるもの、そしていつか叶うもの”。このような、秋田県で生ハムを作られてきた、日本の生ハムづくりの第一人者である金子裕二さんの言葉に勇気と知恵をいただいて約12年。ようやく高級レストランのシェフに喜んでいただけるものができました」と田嶋さんは語ります。
地場の三元豚(白豚)を使った生ハムも高品質です。軽やかな味わいです。太良町は、かつては皇室に献上したこともある太良豚など、養豚業が盛んな土地なのです。
おいしさの秘訣を教わりました!

「12年前に、もも肉50本から始めました」と田嶋さん。今や1000本もの生ハムを熟成できる規模にまで発展させました。12年かけて試行錯誤を重ねてきた、おいしい生ハムづくりの一端を教えていただきました。

これが純粋黒豚のもも肉です。一般的な三元豚(白豚)と比べて小さくて色が濃く、肉質が緻密なことが特徴です。豚選びが、おいしさの基本です。

筋などを切り取ります。肉の断面を綺麗にすることから生ハムづくりは始まります。

血抜きをします。血管に沿って力を加えることで血を押し出します。この丁寧な仕事が、風味の良さに繋がります。

塩を手で全体に擦り込みます。乾塩法と呼ばれる製法で、田嶋さんは塩を2回に分けて擦り込むイタリア方式を現在では取り入れています。塩は長崎県産の五島灘の海水でつくった塩に行き着きました。

1カ月ほど置いて塩を染み込ませたら乾燥です。冬は外気を入れながら、冷蔵室内で風を当てて乾かします。これをしっかりとすることで、確かな熟成に繋がります。

いよいよ熟成です。虫やダニの被害を防ぐために、全体にラードを塗ってから熟成させることで、品質が飛躍的に良くなったそうです。これが田嶋さん流です。温度20℃、湿度60%のコントロール下で、じっくりと熟成させます。

もう食べごろだよ、と肉が芳香を発します。そうしたら個別に真空パックをし、さらに熟成させて出荷です。盛島さんは、この10年、年に数回は田嶋さんのもとに足を運こび、理想の生ハムを求めて田嶋さんとともに歩んできたのです。

熟成場所である太良町は、有明海を臨む風光明媚なところです。自然の豊かさも美味しさをもたらすことが想像できます。

シャルキュティエ田嶋は、長年、ソーセージなども作ってきました。田嶋さんは、ドイツ国際食肉加工コンテストでゴールドメダルも受賞しています。

見事な熟成です!
熟成した純粋黒豚の生ハムを切ってもらいました。旨そうです。見事です。純粋黒豚は、もも肉にもサシが入っています。実に贅沢な生ハムです。

0.5㎜スライスです!
極めて薄くスライスしてあります。繊細な食感と豊かに広がる旨味が楽しめます。冷凍で届きます。食べる際は、一日かけて冷蔵庫で解凍すると、脂が程よくとろけ、旨みがふくらみます。薄いので短時間で解凍できますが、急いだ場合は塩味が強く感じられます。その際は、解凍して皿に盛り、そのまま常温で10分ほど置いておくと、まろやかな味に戻ります。お楽しみください!
文・町田成一
撮影・松隈直樹(シャルキュティエ田嶋)
横田裕美子(商品画像)