クラフトマンの信念が生む
「ばらん家の純粋黒糖」
搾りたてのサトウキビの汁を薪の高温火力で一気に炊き上げる!
薪の調達から栽培、製糖まで、すべて人の手で行う!農薬、化学肥料を一切使用せず、手間がかかっても妥協はなし。 搾りたてのサトウキビの汁を薪の高温火力で一気に炊き上げ、糖度100度の黒糖に仕上げます。熊本県南の水俣・芦北地域では、古くからサトウキビ栽培と製糖の伝統が息づき、11月から12月にかけて手仕事による製糖が行われています。
さとうきび栽培の北限「芦北・水俣」
気候と流通が黒糖を根づかせた
黒糖といえば奄美や沖縄を思い浮かべますが、 その文化は熊本県南にも根づいています。 水俣・芦北地域では、今もさとうきびが点在する風景が見られます。 特に水俣は肥後と薩摩の境界に位置し、薩摩街道の終着点として、 戦国時代から江戸時代にかけて、水俣の袋地域には番所が置かれ、人と物資が行き交う要所でした。また、不知火海の穏やかな内海は、沿岸をつなぐ物流の役割を担っていました。こうした条件のもと、江戸後期から明治にかけて、 不知火海沿岸一帯でさとうきびの栽培、製糖技術が広がったとされています。 現在でも、お歳暮に黒糖を贈る習慣が残っており、 黒糖が暮らしの中に根づいてきたことがうかがえます。
栽培から黒糖生産に関わる全工程を手がける
『ばらん家』
平成19年設立。障害者支援施設としてスタートしたばらん家。もともとは竹細工の加工から始まり、平成23年から“サトウキビ”の栽培、“黒砂糖”の製造に着手。『ばらん家』では「黒砂糖の伝統的な製法を継承すること」、「耕作放棄地となったかつての圃場を再生し、町の景観も取り戻したい」などの目的を持って事業に取り組んでいます。
働く場所、生きる道筋を見つけてやりたい
NPO法人ばらん家の代表理事、松原久美子さんのお話を伺うと、その道のりは平たんではありませんでした。
きっかけは保健師として水俣病と向き合った経験にあります。
病の先にある暮らしの困難を目の当たりにし、
支援ではなく「働く場そのものをつくる」必要がありました。
最初は竹細工から始まったものの、お金が稼げない。
模索が続く中で、水俣に新栄合板工業という会社が本業とは別に黒糖を作っていたことから、社長に相談に行った。
竹とさとうきびは似ている。作り方を教えてくれないかと。
社長は厳しい人らしいが、松原さんの話を聞くうちに、「お前になら作り方を教えてやる、うちのすべての畑を任せる」、
という話になり、3年通いつめて栽培から製糖までの流れを学び、ばらん家に取り込むこととなったのです。
本物をつくることでお金を稼ぐ、人が働く場をつくる、自立の道を創る—
その信念が、ばらん家のものづくりの根底にあります。
農薬不使用、有機肥料のみで栽培
環境への配慮も徹底する
『ばらん家』では“サトウキビ”の栽培に農薬を使用することなく、有機肥料のみで栽培しています。堆肥は、3〜4年熟成させた竹の端材と牛糞を合わせたものを自分たちで作ります。害虫駆除や除草には自家製の竹酢液や唐辛子から抽出した液を散布するのみ。もともとは竹細工から始まった団体なので、竹の扱いには慣れている。とはいえ、イネ科のさとうきびにつきやすい夜盗虫をやっつけるために、年に3回ほど、6〜10月に手作業で一匹ずつこの夜盗虫を駆除しています。除草もすべて手作業です。0.7ヘクタールを現在栽培し、サトウキビの収穫量は25トン。ものすごく手間がかかる栽培ですが、地道な作業によってさとうきびがつくられているのです。
薪も自分たちで切り出す
チェーンソー特別教育修了者を有するスタッフたち
チェーンソーを自在に扱い薪を作る
薪火の火力でなければ固まらない
黒糖作りに欠かせない薪。これも自分たちで確保してきます。
その方法に驚きます。なんと、高速道路などの工事現場を見かけては、工事業者に交渉に行き、
「切り出した材木や切株などをすべて片づけるので、私たちにいただけませんか?」と話をつけるのです。
そして、自前のチェーンソーを持ち込みます。
チェーンソーによる伐採は、法令に基づく特別教育が必要な作業です。
効率性の半面、一歩間違えれば重篤な切創事故や、排気ガスによる一酸化炭素中毒など、危険なリスクが常に存在するためです。
ばらん家では、スタッフに技術を習得させ、木の伐採から薪づくりまでを担えるよう、支えています。
絞りたてのさとうきびの汁を
薪の高温火力で一気に炊き上げる
黒糖は、時間との勝負です。高温かつ短時間で、濃縮した黒糖にします。
搾ったさとうきびの汁は、すぐに発酵し風味が落ちたり黒変します。絞った翌日に炊き上げても固まらないのです。ばらん家ではトラックいっぱいになるまで収穫し、すぐに自社の加工場に持ち込み、その日のうちに絞って黒糖作りに入ります。これを収穫期には何往復も行うのです。
12月に入りさとうきびの収穫が始まります。その時点で糖度は20度。
特注の絞り機に入れ、さとうきびから”ジュース(汁)”を絞ります。
絞り終わったらすぐさま、隣の釜に流し込み、薪の火力で一気に炊きあげます。
途中で出てくるアクも丁寧にすくい上げます。
一つ目の完成目安は糖度「70-72度」。ここで取り出したものが、商品にもなっている黒糖蜜です。
二つ目は、黒糖が完成する糖度「100度」です。
糖度が上がりきるまで、釜底面の焦げつきを防ぐために、何度もひしゃくですくいあげる作業はまさに重労働です。
何度も作るうちに、温度と糖度が比例することがわかり、今は糖度計は使わず、温度管理だけで仕上げています。
400kgのサトウキビからとれるジュースが約200L、煮詰めて黒砂糖に仕上げた段階では40kgほどになります。当初の10%にまで凝縮されていくことに改めて驚きます。
石灰を使わず作る
まさに純粋なさとうきびの味わい
一般的には、不純物を取り除いたり、商品の均一化をはかるために石灰を使いますが、ばらん家はあえて使いません。
当初は石灰を入れて作っていましたが、試しに石灰を抜いてみたところ、問題なく凝固させることができたため、
「ここまで環境に配慮して手間暇かけているのだから、うちは石灰なしで純粋な黒糖ってことで作ることにした」と言います。
作物由来のミネラルの風味。雑味も含めて一釜ごとに個性が生まれるのが魅力です。
精製された砂糖にはない、素材そのものの味です。
この塊を地元の方はブロック状にカットして、お菓子代わりにそのまま口に放り込むそう。
スプーンなどで潰せば簡単に崩れ、日々の料理にお使いになれます。
黒糖でラフテーを作ったり、日常には、黒糖ミルクティで楽しむなどがおすすめ。お菓子作りもコクが生まれ、驚きの美味しさに仕上がります。
今後、アグリコール製法でのラム酒造りにも挑戦予定
有機JAS認証をとり、世界へ打って出る集団へ
以前製造にトライしたラム酒
脱プラ!絞った後の繊維で紙素材を生み出す
次の挑戦として見据えているのは、さとうきびのバガスによる紙作りとラム酒です。一般的にはラム酒は廃糖蜜から作られ、サトウキビの絞り汁から作るアグリコール製法の占める割合は世界でもたった2〜3%しか存在しません。また有機JASを取得できる条件は十分にそろっているので、これをとれば、海外の門戸も一気に開けます。
働く方々は皆溌剌としていて、会話も明るい声が絶えません。
このかっこいい集団の今後が楽しみです。
(株)食文化 川口



