山の草木と果実の魅力をジェラートに閉じ込める
徳島・上勝町「TONPUKU」の
クラフトジェラート
徳島県の山あいに位置する上勝町(かみかつちょう)は、人口約1300人と四国でも特に人口の少ない町。料理にあしらう“つまもの”を地元女性が商う「葉っぱビジネス」や、日本で初めて行われた「ゼロ・ウェイスト宣言」で知られる、小さくともキラリと光る自治体です。そんな山間部の小さな町のクラフトジェラート工房「TONPUKU」では、山の草木や果実の魅力をジェラートにぎゅっと閉じ込めています。
「ジェラートに使えない?」と
地元素材が持ち込まれる
TONPUKUのミルクが入ったジェラートには、クロモジ、ニッキ(肉桂)の葉、ヨモギといった山の素材を使っています。自分たちで山から採取したり、地元のお母さんたちに集めてもらったりした山の素材を閉じ込めた、山の工房ならではのフレーバーがTONPUKUの特徴の一つです。
夫の翔さん(C)ヤマザキノブアキ
「ニッキの葉は、地元では餡入りの餅を包む『木の葉餅』に使われています。『うちの山にニッキがあるんだけど、ジェラートに使えない?』と持ち込まれたのがきっかけで、紅茶やスパイスと合わせたチャイのジェラートにしました。ヨモギは地元のお母さんたちに摘んできてもらい、風味をしっかりと感じられるようにアクを抜き過ぎないように注意して調理しています」と、ジェラートを手がける石川美緒さん(以下、美緒さん)は話します。
日本産の肉桂(ニッケイ)の根の皮から作られるスパイス。TONPUKUのジェラートでは肉桂の枝葉を使っている。
香りが似ているシナモンは、スリランカ産のセイロンニッケイの樹皮から作られる
一方、乳製品を使わないさっぱりとしたジェラートは、季節の果実を丸ごと食べているようなフレッシュさが魅力です。特徴的なのは、すだち、青ゆず、黄ゆず、ゆこうなどの徳島らしい香酸柑橘。「本業がみかん農家だからこそ、柑橘のジェラートには譲れない思いがあります。それぞれの柑橘の違いや特徴を楽しんでもらえたらうれしいです」(美緒さん)。
東京から移住、後継者不在の
みかん畑を継承した
埼玉県出身で進学先も就職先も東京だった美緒さんは、2016年に、それまで縁のなかった徳島県勝浦町へ夫の翔さんと二人でIターン移住しました。「一般企業でそれぞれ働いていた私たちは、結婚を機に夫婦で一緒に仕事をしたいと考えるようになりました。東京での起業も選択肢にありましたが、自分たちのペースでやりたいことを実現できるのは、むしろ地方かもしれない。そんな思いで2015年の夏に参加した移住イベントで、勝浦町のみかん農家が後継者を募集しているという話に出合ったんです」(美緒さん)。
当時20代だった二人はその話にぐっと心をつかまれ、その年の暮れにはみかんの収穫現場に入って繁忙期を体験。そこで就農のイメージがはっきりとして、翌年の3月には会社を辞めて移住を実現させました。移住イベントに参加してわずか半年後のことでした。
以来およそ10年間、「あおとくる」という屋号のみかん農家として、主に熟成みかん(温州みかん)の栽培と販売に携わってきました。「みかんは1年に一度しかお客様に届けられないからこそ、通年で販売できる商品がほしいという思いがずっとありました。みかん農家が一番忙しい冬の時期、私たちにとっての癒しは、お風呂にゆっくりつかりながら食べるアイスでした。忙しい毎日の中で寄り添ってくれたその存在が、いつしか特別なものになっていました」(美緒さん)。
そんな“特別な存在”であるアイスと、つくり手として向き合うきっかけになったのは、この10年で身をもって実感した気候変動でした。
毎年の異常気象に不安、
ジェラート事業に挑む
「私たちの地域で60年以上みかん栽培を手がけてきたベテラン農家さんが、『初めて経験するような天候異常が、ここ数年は毎年続いている』と話すのです。私たちも、毎年のように変わる気候がみかんの生育に影響を及ぼしていることを、身をもって感じてきました。それは単純に温暖化で気温が高くなるといったものではなく、ものすごく雨が多かったり、逆に少なかったり、寒い日が続いたり、虫が大量発生したり。こうした予測不能な変化に振り回されて、近い将来みかん農家だけではやっていけなくなるのではと不安が募っていきました」(美緒さん)
通年で届けられる商品を作りたいという思いと、繁忙期の冬に寄り添ってくれたアイスの存在が、石川夫妻をジェラート作りへと導きます。「自分たちが育てているみかんや柑橘類をもっと多くの人に届けられるのではないか――。そんな可能性も感じ、思い切ってジェラートマシンに設備投資をし、独学でジェラートを作り始めました」(美緒さん)。
販売を開始したのは2024年4月。みかん畑のある勝浦町の隣町である上勝町に、工房を兼ねた小さな店舗を開いたところ、徳島県内のみならず高知県や香川県からも客が訪れました。
山の食材と果実を味わう
「8種のジェラート」
山の工房で丁寧に作られるTONPUKUのジェラートは、8種類を各1個ずつ詰め合わせたセットでお届けします。ミルクを使ったジェラートには季節を問わずお届けできるものもいくつかありますが、ミルクを使わないさっぱりしたジェラートは季節ならではの果実を使ったものが多く、セット内容は旬に合わせて変わります。
最初にお届けするのは、徳島を代表する柑橘3種のすだち、ゆこう(柚香)、黄ゆずが揃って入るセットです。すだちは、自家農園「あおとくる」産です。丁寧に削った皮も練り込んでおり、鼻に抜ける香りと酸味が爽やかで食事中の口直しにもぴったりです。希少柑橘のゆこうは爽やかで優しい酸味と皮のほろ苦さ、繊細な香りとまろやかな風味が広がります。そして黄ゆずは華やかな香りと色、後味の苦みに、まるで丸ごと食べているような満足感があります。ぜひ3種の違いを味わってください。
イタドリ、小夏、ヤマモモ、和栗…
期間限定素材も
季節が変わるとラインアップは変わります。いちご、レモン、イタドリ、小夏、キウイ、ヤマモモ、スイカ、イチジク、リンゴ、和栗、なると金時の石焼きいも、自家製ラムレーズンなども期間限定で登場する予定です。
TONPUKUというブランド名の由来は「明日もまた頑張ろう」と思えるように、おいしいジェラートを”頓服”して回復してもらいたいから、と美緒さん。都市部では得られにくい季節感や山の気配を、ジェラートを楽しむひとときに感じてみてください。
取材・文/大屋奈緒子
写真提供/TONPUKU
複数の配達期間が選べます
3/7出荷 TONPUKU「徳島の山の食材と果実でつくるジェラート8種」各1個 計8個(1個110ml)※冷凍
5,200円(税込)
- 販売中 在庫数 7
- クラフトジェラートTON...



