熊本県津奈木町産
「つなぎ海鰻」
豊かな不知火海が育む 海水育ちの珍しい鰻
熊本県津奈木町には海水で養殖する鰻がある。その鰻を手掛ける佐々木水産の社長は子供のころから家の目の前にある海辺が遊び場であり、河口に潜む鰻をよく釣っていた。味わいは格別。ゆえに、試しに育ててみようと海のすぐそばで養殖を始めたのが3年前。一般的な淡水とは育て方のアプローチが違う。まさに観察と技術の賜物だ。
目の前の海で、天然鰻を獲って
遊んでいた記憶が原点
佐々木水産の佐々木社長は3代目。もともと祖父や父が水産業を営んでいました。海が好きだったことから何の迷いもなく、水産高校を出て18歳でこの道に飛び込み養殖一筋50余年。観察と研究が大好きで、手がけた魚は、ふぐ、鯛、平目、シマアジ、たこ・・と実にさまざま。そして、今注力しているのが「海水育ちの鰻」です。
不知火海は九州本土と天草諸島、長島に囲まれ、北部には広大な干潟が広がる、多様な生きものを育んできた内海です。佐々木水産では、目の前に広がるこの不知火海の海水を取り込み、鰻を育てています。
海のすぐそばにある養殖場
河口部のこうした穴の中に潜んでいるらしい
ストレスが無いから、すべて青鰻状態
陸上養殖の現場を見せてもらいました。陸上とは言うものの、ほぼ海という環境です。
絶えず新鮮な海水を取り込み循環させています。佐々木水産では魚が健康的で病気にならないよう絶えず気を配っているので、無投薬での養殖を実現できています。
一般的な淡水養殖の現場では、水の中は暗く、鰻たちは団子状になって群れているのを見かけます。ところが佐々木水産の養殖場の水は透明で明るい。しかも鰻たちは群れることなく自由に泳いでいます。
なかでも一番驚いたのは、鰻の色が「青鰻状態」という点です。
この色は「ストレスが無い証」(その証拠に、移したばかりの隣の水槽の鰻は黒かった、それらもそのうち色が青に戻るそう)。
大海原への脱走をはかってか、水槽の壁に向かって高く飛び跳ねるヤツもいます。なんと元気なこと。
絶えず新鮮な海水を取り込む
元気な鰻たち
一押しは脂乗り抜群、魚として旨い
原魚で500g級の特大サイズ!
佐々木社長は「一番自信もって旨い魚として出すとなると、原魚で500g以上」と言います。
佐々木水産が手がける海水養殖では、30cm未満まで育った鰻の稚魚を宮崎や鹿児島から仕入れ、約1年半かけて500gまでに仕上げています。
淡水養殖の場合、稚魚はもっとずっと小さい状態で業者から仕入れますが、これも海水環境への変化に耐えられるようにする工夫です。
海ならではの浸透圧と、海水由来のミネラルの多さから、淡水とは異なる肉質・味わいが生まれます。
そして何より大きく育てるからこその、肉の厚み。抜群の脂乗り。旨みも強く臭みもない。魚として旨い、というのが食べてみての印象です。
一点、皮目のコラーゲン質が厚く、焼き上げるうちに白身が反り返った結果、皮目の焼きが甘くなり固く感じられる、という課題が残っています。
海が身近な津奈木町で、
鰻を海水で育てるという挑戦
2026年は初のつなぎ海鰻まつりを実施
店頭で生から炭火で焼き上げ、蒲焼で提供
かつて、江戸前と言えばおいしい魚の代名詞、その中でも最上位の「鰻」を指す言葉でした。
まさに養殖版「不知火前」です。
2026年夏に初開催した「つなぎ海鰻まつり」では、500g級の大鰻を生から炭火で焼き上げました。箱からはみ出しそうなほどの迫力に、お客様の反応も上々でした。
かつてこの地域は、海の河口で獲れる天然鰻に親しんでいました。
環境が変わり、これからは、人の手で育てる「海鰻」への挑戦です。
今年はじめて世に出すので、現時点で完成形とは言えません。一般的な淡水養殖の鰻とは異なる個性をいかに磨き上げるか。
それが地域商社として津奈木町に関わる私たちの今年度のテーマです。
現在、日本で「海鰻といえばこの産地」と呼ばれる地域はまだありません。
「海鰻といえば、津奈木」
そんな言葉が将来聞かれるようになったらと、この土地から生まれる新たな価値を、皆様にいち早くお届けします。
(株)食文化 川口



