生のボラ子から自家製のカラスミに挑戦しよう!
カラスミの作り方

ボラの卵巣を「ボラ子」と呼びます。
塩漬けにして乾燥すると「カラスミ」になります。毎年11月から12月にかけて、豊洲市場には新鮮なボラ子が入荷します。自家製カラスミ作りは決して難しいことはありません。手間と時間を掛ければ美味しく作ることができます。ぜひ、ご自宅でチャレンジしてみてください。
ボラ子の血抜きをする


血は臭みの原因になるため、最初にしっかりと血抜きをすることが大事です。爪楊枝や串、まち針を使って、血管に穴を空け、血が抜けるようにします。氷水の中で10円玉などを使って、血管をなぞるようにすると血が抜けていきます。たっぷりの氷水に浸して血抜きをします。朝晩1日2回水を変える作業を、3日間繰り返します。
たっぷりの塩で半日塩漬け

塩の種類や塩漬けの期間はお好みですが、12時間ほど塩漬けをします。最初は水が大量に出てくるため、水を捨てて、塩を適度に追加します。ボラ子の水分が抜けてカチコチになります。
日本酒と焼酎で半日漬ける
水で洗って塩を軽く落とした後、日本酒4:焼酎1で半日漬け込みます。
風通しのよい場所で干す

形を整えたら風通しのよい場所で干します。1日2回ボラ子の表裏を返しながら、表面に殺菌と乾燥防止のために刷毛で焼酎を塗ります。お好みの固さになったら、完成です。しっとり仕上げたい場合は約2週間、固めの場合は3〜4週間ほどで完成します。気温や環境によって干し時間は変わるため、毎日、様子を見ることが大切です。また、雨や雪で濡れないようにご注意ください。仕上げに表面にオリーブオイルを塗ると乾燥を防ぐことができます。
酒肴や料理の具材に活躍


薄くスライスして日本酒や焼酎のツマミにしたり、焼き餅に挟んで食べる方法もあります。薄く切った大根で挟んでもいいですね。また、すりおろして炊き込みご飯や蕎麦、パスタ、お茶漬けの具材としても美味しく食べることができます。
まとめて仕込んで冷凍保存
カラスミは水分量が少ないため、冷凍保存しても品質はほとんど変わりません。まとめて仕込んで、年明け以降にも召し上がる場合には、冷凍保存しておくことをオススメします。年内に食べ切る場合には、涼しい場所で保管しておけば日持ちします。
カラスミの作り方は人によって様々です。ここでは基本的な作り方をご紹介しましたが、塩の種類、塩漬け期間、酒の種類、塩抜き具材、干し加減など、私も毎年少しずつ作り方を変えて、自分の理想に近い作り方を模索しています。ぜひ、ボラ子が手に入るシーズンには、自家製カラスミ作りにチャレンジしてみてください。
ボラ子以外でも美味しいカラスミがつくれるのか?
スケソウダラの卵でカラスミ作り
カラスミの原料として最も一般的なのは「ボラの卵巣(ボラ子)」ですが、世界にはほかの魚の卵巣が使われています。その例としては、
1.マグロの卵巣 風味はボラ子よりも濃厚
2.サワラの卵巣 風味が軽く繊細な味わいが特徴
3.タラの卵巣 中国や東欧では塩漬け・乾燥した類似品が作られている
4.コイの卵巣 東ヨーロッパの「タラマ」や中東の「ボッタルガ」のような魚卵ペーストで使われることがある。
5.サバやニシンの卵巣 塩漬け・乾燥処理を施し、類似した製品が地中海地域などに存在。カラスミとは風味が異なる。

スケソウダラの卵巣でカラスミ作りに
挑戦しました!
豊洲市場でも生のスケソウダラの卵巣が入手できます。

血抜きは根気のいる作業ですが
とても重要です。
水に浸しながら血管に針を刺して指で血管をなでるように押し出して血を抜いていきます。この作業を適当に済ませると臭みの原因になります。

氷水に浸してひと晩やすませます。
こうすることで、細かく血管に刺した穴から自然と血が抜け出してきれいに下処理が済みます。また、この時点でアニサキスもちらほらと退去しているのが見られました。
(※アニサキス対処としては干し上げてひと晩、冷凍をしてから食します)


塩漬けにします。
血抜きの下処理が完了しました。ペーパータオルで水分をきれいにふき取ります。容器に塩を敷き詰め、タラの卵巣を並べて、上にもしっかり塩を乗せます。塩は粗塩を選びます。この状態で目安としては5日ほど。途中、タッパーの隅などに出てきた水分は捨てて、必要があれば塩を足し、卵巣が固くなれば塩漬けが完了します。


日本酒と焼酎で塩抜きをします。
塩を落とし、日本酒と焼酎で塩抜きを行います。ここでブランデーなどを使用する手法もありますが、個人的な主観により「日本酒7:焼酎3」の割合がもっとも美味しく仕上がります。指で触り、中心がやや硬め程度で塩抜きは完了です。
(※作り手によって時間や配合は異なります)


直射日光を避けて日陰で干します。
乾燥の目安は1週間程度です。指で触りながら、まだ柔らかければ乾燥時間を伸ばします。たまに裏返しながら、朝晩と霧吹きで日本酒をふりかけます。雨には要注意で、そのままベランダに出しておく場合はビニール袋などをかぶせて対処します。

完成しました!薄くスライスして
まずは酒の肴です。
タラの卵巣のカラスミが完成しました。ボラ子とさほど違いは感じられませんが、どことなく繊細な味わいに、ねっとり感が強い印象を受けました。しかし、タラの卵巣でも美味しいカラスミを作ることが出来ました。
アニサキス対処法として
ひと晩冷凍します。
氷漬けをしていた際に、アニサキスが数匹いました。これだけだと不十分なため、ひと晩冷凍をしてから食します。
写真・文 (株)食文化 田中利佳